日本企業に内定した韓国人学生、就活で考えていたこと

諸(ジェ)さん(24)は韓国外国語大学で日本地域学とメディア論の勉強をしている。8月に日系の大手家電メーカーから内定を得た。4月から日本で働き始める予定。
<略歴>

  • 2010年3月 韓国外国語大学 入学
  • 2013年9月 立教大学留学(1年間)
  • 2016年2月 韓国外国語大学 卒業予定
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    TL:どうして日本に就職しようと思ったのですか?

    諸:私は人と違う意見を提案して受け入れられた時に面白さと興奮を感じます。韓国の企業に入るより日本の企業に入った方がそれを感じながら仕事が出来るのではと思ったんです。

    TL:韓国の企業と日本の企業、どの様なところに違いを感じましたか?

    諸:韓国での就活は、良い大学を出ているだけでは足りずスペックと言われる資格や試験の高得点、インターン経験などが必要になります。みんな必死にそのスペックをつけるために勉強するのですが、結局同じ種類の能力に優劣をつけるだけの競争の様に思え、それに面白さを見い出せずにいました。一方で、日本企業は私たち学生の価値観を見ていると感じました。何ができるか(WHAT)を問う韓国企業と、なぜそうするか(WHY)を問う日本企業では、後者の方に私は魅力を感じました。

    TL:日本の企業も様々かと思いますが、どんな企業に惹かれましたか?

    諸:安定だけではない何か+αの面白さを説明されていた企業です。多くの日本企業が”安定”を韓国学生へアピールしてくる中で、例えば”挑戦”など+αの価値観が説明会で語られていた企業には興味を惹かれました。後でその企業の事業内容を調べた時に、既存の分野に限らず新たな分野へ挑戦しているかなど、説明会の内容が実際の事業に裏付けられているかを良く見ました。もしそうであればきっと説明会で語られた価値観は会社レベルで求められているものなのだなと想像できます。

    TL:一般的に韓国人学生はどの様な理由で日本への就職を目指す場合が多いのですか?

    諸:韓国では優秀な大学を出ても内定率は約半分です。なんとか就職できても残業も多い文化で福利厚生も日本ほど充実していない環境が待っています。少し前に3放世代といって、恋愛、結婚、出産の三つを諦めた世代という意味の言葉が流行りました。厳しい就職状況が続く中で今ではその言葉がマイホーム、人間関係、そして夢、希望まで入れて7つを諦めた7放世代になっています。
     好条件の仕事が少ない中で学生の競争は日本よりも激しいです。韓国は大学進学率が70%を超えて日本より高いですし、TOEIC満点はざらで、留学経験を積んだり複数の資格を取得して就活に臨む学生が多いです。そんな学生の約半数が正規の仕事に就けず就活浪人したり非正規の仕事についているので、海外学生を取りたい日本企業は安定を売りに学生を獲得しようとしている様に感じました。日系企業の集まる説明会では安定性、福利厚生の良さが一番にアピールしている企業が多くありましたし。私もある程度の安定は必要だと思いますが、先ほど言ったような+αを探していました。
     大半の人は人生の多くの時間を仕事に費やす事になります。なので仕事を選択するということはどんな人生を送っていくかという選択でもあると思っています。ある程度の安定は確かに大切だけど、自分の仕事に面白さを感じずに、やる気ない疲れた顔したおじさんにはなりたくないな、と思っていましたので。

    ジェさん2

    TL:人と違う意見を提案していく事に面白さを感じるようになったのは?

    諸:中学生の時に日本へ一人旅に出た事があります 。関西のゲストハウスに泊まりながら一週間程大阪、京都、神戸などを観光して歩き、他の文化に初めて触れました。例えば韓国では一人で外食することは少しタブーな文化なのですが、日本では一人で外食している人が当たり前にいたりなど、そんな違いを中学生なりに見て、今の環境で当たり前だと思い込んでいる事は他の文化ではまた別だという事に気づきました。それを家族や友人に話すのが楽しくて、それが最初のきっかけですね。あと高校時の近現代史の 大学の現代史の先生にも大きな影響を受けました。韓国で一般的に良いとされている政治的意見を違った視点で批判するその先生の授業に面白さを感じました。立教大学へ留学した時にはゼミで日本の学生と様々なテーマでディベートする機会が多く、その経験にも影響されたと思います。
     外国人が採用されている理由の一つはやはり違った価値観で意見を出せることにあると思います。外国で働くということは自分が少数派に属することになりますので、人とは違った意見を出す面白さを感じられる機会が多いと思います。それが楽しみです。

    2015年09月14日 | Posted in 海外就職, 留学 | | No Comments » 

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