ロケット打上げに没頭。そこから生まれた学びへの意欲と人とのつながり

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今回は東京工業大学のロケットサークル「CREATE」さんにお邪魔してお話を聞いてきました。普段インタビューしている「人とは少し違った時間軸で歩んできた人」というわけではありませんが、「夢」という単語と同時に「難しそう」というイメージを想像させるロケット。その打ち上げに没頭する大学生が、普段どんな活動をしており、そこからどんな学びやつながりが生まれているのか、聞いてみました。場所は東京工業大学大岡山キャンパス。話をしてくださったのは、CREATE代表の八島さん(学部4年生)とプロジェクトマネジャーを務める大村さん(学部3年生)。

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ロケットサークルCREATE

CREATEは2011年4月にサークルとして設立された比較的新しいサークル。部員は約20名で、決まった活動は木曜日に進捗確認のミーティングがあるくらいで、あとは決められた責務を各々こなしていく。担う役割ごとに、構造班、電装班、推進班と分かれており、その全体の進捗管理などを担うのが大村さんのプロジェクトマネジャーとしての仕事だ。構造班は少し想像出来るが、電装班と推進班がどんなことを行うのか聞いてみた。

大村さん:ロケットは飛ばすだけでなく、上空でパラシュートを開いたり、飛行履歴をとったりします。その際のプログラムを書いたり、回路を設計して作成するのが電装班の役割です。地上でロケットの状況をキャッチする必要もあるので、そこらへんの設計・作成も電装班の役割です。推進班はエンジンの運用が仕事です。配管を組み立てたり、弁を開くための回路を組み立てたりします。飛行実験の際に一番忙しく動き回るのが推進班ですね。あと、今のところはエンジンは市販のものを使っていますが、自作エンジンの開発にも取り掛かっています。

あまり馴染みがないので想像するのが難しいが、写真の上側にあるのが回路で下側にあるのが推進力を生むエンジン。

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これらを部室の作業台ではんだごてなどを駆使して、組み立てていく。

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そして、こんなロケットが作られる。

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ちなみに、部室にはクーラーはないので、夏場は扇風機でなんとかしのぐ。年に何度か打ち上げ実験があり、直近では11月に伊豆大島で打ち上げ実験をする。順調にいけば問題ないのだが、そんなにうまくはいかないらしく、実験日が近づいてくると、各々家や部室で徹夜でプログラミングなどをして仕上げていく。下の動画は2013年に秋田県能代市での打ち上げ実験の様子。

 

ロケットの知識の習得方法とは

11月の伊豆大島の打ち上げでは、上級生班と1年生班に分かれて打ち上げを行う予定だ。元々ロケットや物作りが好きで入っている部員が多いとはいえ、ロケットの打ち上げなど経験がないはず。どうやってロケットの知識をつけていくのか、聞いてみた。

大村さん:経験から学んでいくことが多いです。1年生は上級生に教わりながら、今は本当に11月に打ち上げられるのかヒヤヒヤしながら準備を行っています。1〜3年生はとにかく作ることで経験を積み、4年生が理論や解析を担当しています。今扱っているのはハイブリッドロケットというものですが、本などはほとんどないので先輩に聞いても分からないことが出てきたら、あとは論文を読むしかありません。数式が分かれば内容は大体分かるので、自分たちでどんどん調べながら知識を習得していきます。

時には、大学の講義で既に習得済みの内容が出てきたりする。そんな時は、少しだけ楽しいようなうれしいような気持ちになる。

ロケットを通して生まれるつながり

ロケット打ち上げという活動を通して、いろいろな人とのつながりが生まれていく。

1つは、他大学のロケットサークルとのつながり。秋田大学や東北大学、千葉工業大学などのロケットサークルと交流がある。打ち上げ実験は合同で行うことがあり、技術交流会も積極的に行っている。各大学のロケットにはそれぞれ特徴があり、大きさも様々でエンジンを自作しているところもある。CREATEは小型・軽量ロケットを1つのコンセプトにしていおり、そのために材料や表面精度、筒の中への納め方を工夫するなどして実現させている。各サークル間では何かを競うわけではなく、各々のコンセプトに合わせてどんな技術で実現させていくかがおもしろいところだ。技術交流会では、お互いに技術談義をして自分たちでは思いつかなかったような考え方や技術に触れることができるのが楽しい。

企業とのつながりもある。1つは工具のネットショッピングサイト「モノタロウ」を運営する株式会社MonotaRO。先方から協賛させてくれないかと打診があった。何かとお金がかかるロケット打ち上げ。こうした企業からの支援は非常にありがたい。また、ある材料を仕入れようとしたら、ロケットの打ち上げをしているという話をすると無料で提供してくれた。さらに、学習塾を運営する企業からも打診があり、一緒に子供向けのロケット教室も開いている。いずれも、先方からの打診。ロケットという夢のある活動をしているサークルならではの企業とのつながりだ。

さらに代表の八島さんは、CREATE創設者が勤めている北海道大樹町にあるロケットのベンチャー企業でインターンをした。自分たちのロケットとはスケールも扱う技術も違く、ただただ興奮するばかりだった。

純粋にロケットの打ち上げに没頭し、そこから自然と生まれていくつながり。没頭していると視野が狭まらないかと思われがちだが、逆にロケット打ち上げという活動を通して、いろいろな人と接して様々なことを吸収しているように思えた。

就職観を聞いてみた

今まさにやりたいことに没頭している八島さんと大村さん。お二人とも大学院まで進学するので、就職活動はもう少し先だが、今の就職観について聞いてみた。

八島さん:今のところは博士課程への進学や大学で研究者になることは考えてません。修士を卒業したら企業への就職を考えています。大学での研究はモノを作ることがメインではないと感じています。修士は研究というものを体系的に学ぶために進学しますが、ものづくりをしたいという気持ちが強いので、企業に就職したいと思っています。小さい頃からものを作ることが好きでしたから。

大村さん:今まさに何をやりたいのか問いかけているところです。それこそ、本当に自分が作りたいのがロケットなのかどうか、というところからです。いろいろなものを作ったり、触れたりしながら自分が何をしたいのか考えていきたいと思っています。

就職がまだ先であるにも関わらず、自分の進路を真剣に考えていることがしっかりと伝わってきた。自分のやりたいことをやっているからこそ、何が自分にとって大切なのか考える機会が多いのだろうなと感じた。

最後に

ロケット打ち上げという夢のある活動。没頭するが故に自発的に生まれる学びへの意欲。「自分から求めた時の吸収のスピードはすごい」インタビューの途中でこんな話題で盛り上がりました。自分が求めたタイミングで勉強をしてみたり、社会に出て働いてみたり。そして、また勉強したいことが出てきて大学に戻ってみたり。そういう意欲が湧いてくるタイミングは人によって違うと思います。もっと柔軟な進路選択が一般的になれば、人それぞれの力が発揮されやすいのだろうなと改めて思いました。

2015年09月27日 | Posted in 未分類 | | No Comments » 

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